平成28年度富山大学地域貢献事業
ライフサイエンスとやま−オープンラボ2016−

 富山大学研究推進機構研究推進総合支援センター生命科学先端研究支援ユニットでは、下記の日程で高等学校の生徒を対象とした講座「ライフサイエンスとやま−オープンラボ2016−」を開催しました。
 この講座は、平成23年度から26年度まで国立研究開発法人科学技術振興機構のサイエンス・パートナーシップ・プログラム事業(平成26年度終了)として、平成27年度からは学長裁量経費の支援のもと「富山大学地域貢献事業」として実施し、高等学校の生徒に大学の高度な施設・設備を利用した「遺伝子」「顕微鏡」「放射線」の3つのテーマの探究的学習活動を提供しており、今年度から新たに「動物」をテーマとした講座を追加して実施しました。
ねらい
  • 本講座は、本学の中期計画「地域の生涯学習の拠点として、若者世代、現役・子育て世代、シニア世代のそれぞれのニーズに対応した、多様な学習機会を提供する」に基づき、富山県内の高等学校の生徒に探究的な学習の機会を提供し、科学的な見方や考え方を育むことをねらいとする。
  • 本講座による探究的学習活動を体験することにより、生命科学分野への興味・関心の高揚と科学への知的好奇心や探究心の育成、並びに生徒の進路意識やその後の職業選択についての醸成を期待する。
  • また、生徒が実際に大学の研究に利用されている最先端機器に触れたり、教職員や学生と身近に接したりすることにより、知による豊かな社会の創成を目指す富山大学の使命と役割について広く理解してもらうきっかけとし、地域社会に支えられた大学創りの礎の一つとする。
実施日 平成28年8月4日(木)、5日(金)
会 場 富山大学杉谷キャンパス
 研究推進機構研究推進総合支援センター
 生命科学先端研究支援ユニット
 ○遺伝子実験施設(講座A)
 ○分子・構造解析施設(講座B)
 ○アイソトープ実験施設(講座C)
 ○動物実験施設(講座D)
参加者
富山県立魚津高等学校 2年生 13名
富山県立砺波高等学校 2年生 16名

講座A
テーマ 遺伝子研究を体験してみよう
講 師 田渕圭章(研究推進機構・教授)
T A 鍋島彰太(医学薬学教育部)
目 的 大腸菌や高等動物の培養細胞にクラゲ由来のGFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子を導入する遺伝子組換え実験を行い、大腸菌や細胞の取扱い操作及び遺伝子組換え実験を理解する。
内 容
  • クラゲの蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を大腸菌と哺乳類の培養細胞に導入する。
  • 種々の条件下で一晩培養したGFP遺伝子導入の大腸菌を観察する。
  • 上記で操作した大腸菌について紫外線照射装置を用いてGFPタンパク質の発現の確認を行い、次に蛍光顕微鏡を用いて哺乳類の培養細胞に導入されたGFPタンパク質の発現の評価を行う。
  • また、ポストゲノム研究で注目されているマイクロアレイ遺伝子発現解析法、個人の遺伝情報に基づいたテーラーメイド医療など、最近の遺伝子研究の進展や今後の生命科学研究の展望、社会的影響についても講義する。

講座B
テーマ 顕微鏡で探るミクロの世界
講 師 五味知治(研究推進機構・准教授)
T A 井上貴斗(医学薬学教育部)
目 的 歴史的な単レンズ顕微鏡を身近な材料で自作し、顕微鏡の原理や発展の歴史などを理解するとともに、電子顕微鏡などの操作・観察を通して、伝染病などの究明で人類に多大な貢献をした顕微鏡について体験的に学ぶ。
内 容
  • 17世紀にオランダのレーウェンフックが考案したガラス玉顕微鏡を生徒自身で作製し、自分の口腔粘膜や毛髪、花粉などを採取して観察する。
  • 自作標本を研究用光学顕微鏡で観察し、自作顕微鏡像と比較するとともに、蛍光観察を通じて、光と色との関係を学ぶ。
  • 自分の毛髪や蟻を処理して走査電子顕微鏡用の試料を実際に作製し、光学顕微鏡では見えないミクロの世界を探索する。
  • 富山県出身のノーベル賞受賞者である田中耕一さんの考案を応用した質量分析装置などの大型分析機器を見学する。

講座C
テーマ 見て測って学ぼう!アイソトープと放射線
講 師 庄司美樹(研究推進機構・准教授)
T A 丹野 優(医学薬学教育部)
目 的 教育用放射線源と放射線測定器を用いて放射線の物理的性質を調べるとともに、食物に含まれる天然のアイソトープの分布状態を調べることにより、放射線に対する理解を深め、正しい対処法について考える。
内 容
  • 教育用線源と携帯型放射線測定器により放射線の物理的性質を調べ、放射線の工業利用である厚さ計の原理について学ぶ。
  • 霧箱を作製し、私たちの身の回りの放射線や放射性物質からの放射線の通った跡を霧として観察する。
  • イメージングプレート、GMサーベイメータにより食物の測定を行い、自然放射線を視覚的、聴覚的に理解する。

講座D
テーマ 生殖補助技術と動物を用いた実験
講 師 高雄啓三(研究推進機構・教授)
西園啓文(研究推進機構・助教)
T A 菊川 孝(薬学部)
浜田雄大(医学部)
津村啓太(工学部)
目 的 脳科学の研究で用いられているマウスの行動解析や、不妊治療に応用されている体外受精などの生殖補助技術を実際に体験し、先端科学への興味を持ってもらう。
内 容
  • マウスの行動解析手法について学び、画像解析ソフトウェアを用いてオープンフィールド内を自由に動き回るマウスがどれだけの距離を動いたかを計測する。
  • マウス精子、卵子、受精卵などをタブレットやスマートフォンに取り付けるタイプの小型顕微鏡を使って観察し、撮像する。希望者には、自分の端末での撮影も可能とする。
  • 体外受精を実施し、翌日に受精卵が発生するかどうかを観察する。
  • マイクロマニピュレーターを操作し、受精卵を掴んだり、透明帯に穴を開けたりするなど、不妊治療で実際に行われている操作を体験する。