平成24年度サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト
ライフサイエンスとやま−オープンラボ2012−

 富山大学生命科学先端研究センターでは、下記の日程で富山県立魚津高等学校および砺波高等学校の生徒を対象とした講座「ライフサイエンスとやま−オープンラボ2012−」を開催しました。
 この講座は、独立行政法人科学技術振興機構が支援するサイエンス・パートナーシップ・プロジェクトとして昨年度から実施しているもので、高等学校の生徒に大学の高度な施設・設備を利用した「遺伝子」「機器分析」「放射線」の3つのテーマの探究的学習活動を提供しました。
ねらい
  • 本講座は、本学の中期計画「地域の高校と連携した公開授業や小中学生を対象にした小中学生講座を開設し、地域の教育機関との連携を推進する」に基づき、富山県内の高等学校の生徒に探究的な学習の機会を提供し、科学的な見方や考え方を育むことをねらいとする。
  • 本講座による探究的学習活動を体験することにより、生命科学分野への興味・関心の高揚と科学への知的好奇心や探究心の醸成、並びに生徒の進路意識やその後の職業選択についての啓発を期待する。
  • また、生徒が実際に大学の研究に利用されている最先端機器に触れたり、教職員や学生と身近に接したりすることにより、知による豊かな社会の創成を目指す富山大学の使命と役割について広く理解してもらうきっかけとし、地域社会に支えられた大学創りの礎の一つとする。
実施日 平成24年8月2日(木)、3日(金)
会 場 富山大学杉谷キャンパス
 生命科学先端研究センター
 ○遺伝子実験施設(講座A)
 ○分子・構造解析施設(講座B)
 ○アイソトープ実験施設(講座C)
参加者
富山県立魚津高等学校 2年生17名
富山県立砺波高等学校 2年生14名

講座A
テーマ 遺伝子研究を体験してみよう
講 師 高崎一朗(生命科学先端研究センター助教)
田渕圭章(生命科学先端研究センター准教授)
T A 石黒尋保(大学院医学薬学研究部)
菅原有希(大学院医学薬学研究部)
目 的 大腸菌や高等動物の培養細胞にクラゲ由来のGFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子を導入する遺伝子組換え実験を行い、大腸菌や細胞の取扱い操作及び遺伝子組換え実験を理解する。
内 容
  • クラゲの蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を大腸菌と哺乳類の培養細胞に導入する。
  • 種々の条件下で一晩培養したGFP遺伝子導入の大腸菌を観察する。
  • 上記で操作した大腸菌について紫外線照射装置を用いてGFPタンパク質の発現の確認を行い、次に蛍光顕微鏡を用いて哺乳類の培養細胞に導入されたGFPタンパク質の発現の評価を行う。
  • また、ポストゲノム研究で注目されているマイクロアレイ遺伝子発現解析法、個人の遺伝情報に基づいたテーラーメイド医療など、最近の遺伝子研究の進展や今後の生命科学研究の展望、社会的影響についても講義する。

講座B
テーマ 医学・薬学研究での機器分析を体験しよう
講 師 五味知治(生命科学先端研究センター准教授)
T A 荒木美帆(薬学部)
富井寿詠(薬学部)
目 的 郷土の誇りである田中耕一さんの業績を理解するとともに、医学・薬学研究で用いられる大型分析機器の操作を体験して、科学研究に興味を抱いてもらう。
内 容
  • 富山県出身のノーベル賞受賞者である田中耕一さんの業績と、その現代生命科学への貢献について紹介し、田中さんの考案や質量分析装置の原理等について解説する。
  • ウコン、桂皮、茶葉などの比較的身近な生薬標本と各生薬の有効成分とされている純物質を観察して、自分で選んだ物質の質量分析を行い、構造解析を体験する。
  • 田中さんの考案を応用したMALDI-TOF-MSという質量分析装置を用いて、ある蛋白質の消化物を質量分析し、インターネットを利用したデータベース検索を使って、試料蛋白質が何であるかを探る。
  • 自分の毛髪や蟻を処理して走査電子顕微鏡用の試料を実際に作製し、光学顕微鏡では見えないミクロの世界を探索する。

講座C
テーマ 見て測って学ぼう!放射線と生体影響
講 師 庄司美樹(生命科学先端研究センター准教授)
T A 手賀悠真(大学院医学薬学研究部)
田中智大(大学院医学薬学研究部)
目 的 天然放射線源を用いて放射線の物理的性質を調べるとともに、培養細胞に放射線を照射して生体影響を調べることにより、放射線に対する理解を深め、正しい対処法について考える。
内 容
  • 天然放射性物質を線源とし、線源からの距離を変えたり、しゃへい体によって放射線量がどのように変化するか調べる。
  • 霧箱を作製し、私たちの身の回りの放射線や放射性物質からの放射線の通った跡を霧として観察する。
  • 培養細胞に放射線を照射し、光学顕微鏡で形態の変化を観察する。