平成17年度サイエンス・パートナーシップ・プログラム「教員研修」
高等学校理科実験実技研修会−体験から学ぶ生命科学−
ねらい |
- 本研修は、理科実習教論・実験助手を対象に、実験・実習技術の向上と教員自身の知的好奇心を高めることをねらいとしている。
- 理科教育の充実・発展の観点から、体験学習や、実験・実習教育の重要性が今まで以上に増しており、理科実習教員の役割は、今後ますます責任ある重要なものになってくると思われる。また、科学技術が飛躍的に進歩する今日、生徒の知的好奇心や理科に対する興味、関心を高めるためにも、教員自身が最先端の研究に触れ、高校の設備ではできない実験を体験することには大きな意味がある。
- そこで今回、富山大学杉谷キャンパスの設備・機器を利用し、生命科学における先進的な実習を、4つの領域に分かれて体験する。また、実習後は大学の指導講師を交えて、研修内容や高校・大学の連携等、幅広い内容について意見交換を行う。
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主 催 |
富山県教育委員会(主管:富山県総合教育センター) |
共 催 |
富山大学生命科学先端研究センター |
実施日 |
平成17年10月12日(水)、13日(木) |
会 場 |
富山大学生命科学先端研究センター |
参加者 |
理科担当実習教論及び実習助手 27名 |
実習A |
テーマ |
疾患モデル動物の胚操作(動物実験) |
講 師 |
山本 博(生命科学先端研究センター助教授)
李 成一(生命科学先端研究センター助手)
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目 的 |
医学・薬学をはじめとする生命科学分野の基本的研究手段の一つである「動物実験」を、講義及び実習を通して理解する。 |
講 義 |
動物実験が医学・薬学の進歩とそれによる人類の健康、福祉に欠くことができない重要な手段として多大な貢献をしていること。また、現在がん、エイズ、新興感染症など解明すべき難病が多くあり、動物実験の重要性がこれまで以上に増大していること。そのため、動物を用いた病気の治療法や医薬品の開発に用いられる疾患モデル動物(遺伝子改変動物)の作製と維持に胚操作が重要であることを理解する。
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実 習 |
ラット、マウスを用いて、麻酔、解剖、採血等の手技を行い、マウスの精子・卵子の観察、凍結保存等の胚操作について、見学・実習する。 |
実習B |
テーマ |
活性酸素とその測定(化学及び生物化学実験) |
講 師 |
近藤 隆(医学部教授、放射線生物解析分野長)
庄司美樹(生命科学先端研究センター助教授)
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目 的 |
健康問題で身近になった「活性酸素」について、講義及び実習を通して理解する。 |
講 義 |
酸素なしには生きられない生物が、その代謝の過程で「活性酸素」を発生すること。「活性酸素」は、殺菌や情報伝達分子として働くととともに、老化や生活慣習病の原因となる“両刃の剣”であること。そして「活性酸素」は、身の回りの物理化学的ストレスにおいても生成することを理解する。
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実 習 |
「活性酸素」とフリーラジカルの違いを含めて、電子スピン共鳴装置を用いた測定法を学ぶ。また、細胞内で生成する「活性酸素」については、蛍光色素を用いてフローサイトメータで測定する。 |
実習C |
テーマ |
質量分析装置によるタンパク質と和漢薬成分の分析(蛋白実験) |
講 師 |
五味知治(生命科学先端研究センター助教授)
恒田則子(生命科学先端研究センター技術専門職員)
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目 的 |
質量分析装置の生命科学研究における重要性について、講義及び実習を通して理解する。 |
講 義 |
富山県出身の田中耕一氏の2002年ノーベル化学賞と質量分析装置の生命科学研究なおける重要性について理解し、その業績と現代生命科学への貢献の大きさについて、授業等で関連の解説がなされることを期待する。また、質量分析装置の種類と原理について解説する。
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実 習 |
汎用型の質量分析装置で和漢薬の有効成分の構造を解析するとともに、田中氏が考案した原理を応用した最新型質量分析装置で、タンパク質などの分子量測定等を行う。また、生命科学研究で利用される核磁気共鳴装置、電子顕微鏡、細胞分析装置など各種大型装置を見学する。 |
実習D |
テーマ |
高等動物細胞に対する遺伝子導入実験(遺伝子実験) |
講 師 |
田渕圭章(生命科学先端研究センター助教授)
高崎一朗(生命科学先端研究センター助手)
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目 的 |
インビトロ実験(試験管内実験)として、ヒトやマウス、サルなどの高等動物の培養細胞やがん細胞に遺伝子を導入する実験を行い、細胞の操作や遺伝子実験を理解する。 |
講 義 |
遺伝子研究に欠かせない遺伝子塩基配列決定装置や遺伝子増幅装置などのデモンストレーションを行うとともに、最近の遺伝子研究の進展や今後の生命科学研究の展望、社会的影響について解説する。
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実 習 |
高等動物の培養細胞の形態観察を行い、無菌操作をはじめとする基本的な培養細胞の取扱手技を習得する。また、培養細胞に、発光クラゲの蛍光タンパク質遺伝子を導入して、細胞内での蛍光タンパク質の発現の状態を蛍光顕微鏡で観察する。 |