生命科学先端研究支援ユニット学術セミナー(第87回〜第90回)

第90回
日 時 平成28年7月19日(火)午後4時から
場 所 薬学部研究棟U7階セミナー室8
演 題 放射線による小核形成とその運命について
講 師 児玉靖司 先生(大阪府立大学大学院理学系研究科・教授)
内 容
 小核は、染色体1?数本、または染色体断片を含む主核より小さな核であり、染色体分配異常や染色体切断によって誘発される。現在、小核試験は放射線を含めた環境変異原の検出系として多用されている。しかし、誘発された小核がその後どのような運命をたどるのかに関する情報は少ない。私たちはこれまでに、生きた細胞をそのまま観察するライブセルイメージングを用いて、X線により誘発された小核が再び主核に取り込まれる現象を観察している。取り込まれた小核が、主核のゲノムにどのような影響を与えるのかについて調べるために、小核にX線でDNA切断を誘起し、その小核由来染色体をレシピエント細胞に移入する実験により解析を進めている。最近の成果について紹介し、その生物学的意味について考察する。

第89回
日 時 平成28年4月22日(金)午後5時から
場 所 附属病院2階臨床講義室(1)
演 題 放射線と生命のかかわり−放射線の人体影響
講 師 大西武雄 先生(奈良県立医科大学名誉教授)
内 容
 原爆被爆国であり、福島原子力発電所の大事故を起こした日本人にとって、放射線・放射性物質に対する考えには複雑なものがあります。これまでもこれらの取り扱いに厳しい管理・教育が求められ、国民への被曝が防がれてきました。一方、医療では診断・治療にそれらの特性が発揮されベネフィットに絶大なものがあります。この「便利で怖い」放射線・放射性物質をいかに有益に使うかを解説します。
キーワード:放射線・放射性物質、人体影響、研究利用での注意点、放射線診断、放射線治療、自然放射線、放射線事故、宇宙放射線、人類の宇宙進出

第88回
日 時 平成27年7月30日(木)午後4時から
場 所 薬学部研究棟U7階セミナー室8
演 題 放射線照射環境での細胞運命制御機構の解析
講 師 河合秀彦 先生(広島大学原爆放射線医科学研究所・助教)
内 容
 放射線被曝によって、人体には、さまざまな健康影響が現れます。急性障害としての骨髄・消化管障害、晩発障害としての悪性腫瘍、また、広島長崎の原爆被爆者の疫学調査によって、循環系、呼吸器、消化器などでの疾患のリスクも、統計的に有意に増加することが明らかとなっています。こうした健康影響は、被曝した放射線の線質や線量に依存して「確定的」「確率的」に現れますが、その影響の全ては、身体を構成している多様な細胞への「確定的」「確率的」放射線影響が原因となって発現するものと考えられます。そこで、私たちは現在、放射線被曝によって変化する細胞運命に着目し、その運命変化の決定機構と分子メカニズムを明らかにすることを目的として、さまざまな角度から研究を行っています。
 本セミナーでは、これまでの研究結果と、現在行っているハイコンテントスクリーニングによる分子機構解析などの新しい研究手法について、紹介させて頂きます。

第87回
日 時 平成27年4月28日(火)午後5時から
場 所 附属病院2階臨床講義室(1)
演 題 癌の診断・治療を目的とした放射性薬剤の開発研究
講 師 小川数馬 先生(金沢大学医薬保健研究域薬学系・准教授)
内 容
 骨シンチグラフィーは、X線などの形態診断で感知できる前の段階で骨の機能変化を感知し、転移性骨腫瘍の診断が可能となる。一方、骨指向性の治療用核種標識化合物は、転移性骨腫瘍の疼痛緩和薬剤として使用されている。つまり、転移性骨腫瘍の診断や治療に放射性薬剤を用いた核医学診断・治療の有用性は非常に高い。本講演では、転移性骨腫瘍に対して、現在臨床で用いられている診断・治療薬について概説し、演者が行ってきた放射性薬剤の開発研究について述べる。