生命科学先端研究センター学術セミナー(第1回〜第10回)

第10回
日 時 平成16年2月6日(金)午後5時から
場 所 附属病院2階臨床講義室(2)
演 題 「Innate ImmunityとAcquired Immunityとの相互作用:エイズワクチン開発に向けて」
講 師 高橋秀美 先生(日本医科大学教授)
内 容   本講演では、基本免疫システムと獲得免疫システムとの相違について概説を加えた後、基本免疫システムを活性化する物質の種類によって、同じウイルス由来の蛋白抗原が抗体群を主体とした体液性免疫を活性化したり、キラーT細胞を主体とした細胞性免疫を活性化できること、ならびに感染細胞制御における従来のab型T細胞レセプターを発現したキラーT細胞とgd型T細胞との役割の差異に関し、最近の我々の実験結果を用いて示し、HIVワクチン開発における新たな方策について論じてみたい。

第9回
日 時 平成16年1月16日(金)午後5時から
場 所 医薬研究棟3階ゼミナール室(1)(2)
演 題 「新規多機能癌遺伝子タンパク質DJ-1の機能−抗酸化ストレス、プロテアーゼ能を通じてパーキンソン病、内分泌かく乱物質、男性不妊を結ぶDJ-1−」
講 師 有賀寛芳 先生(北海道大学大学院薬学研究科教授)
内 容
 有賀先生は、演題にあります新規多機能癌遺伝子タンパク質DJ-1を発見され、その機能解析を積極的に進めておられます。DJ-1タンパク質は、抗酸化機能およびプロテアーゼ活性を有するタンパク質で、多くの疾患と関係することが判明してきました。

第8回
日 時 平成15年10月20日(月)午後4時から
場 所 講義実習棟1階102講義室
演 題 「Trafficking of ion transport proteins: new partners and potential therapies」
講 師 Michael J. Caplan 先生(Department of Molecular and Cellular Physiology, Yale University School of Medicine)
内 容
 Caplan教授は、膜タンパク質の上皮細胞における極性発現機構について、分子生物学的、細胞生物学的な手法を用いて研究されています。特に、イオン輸送ポンプや嚢胞性繊維症の原因遺伝子産物である塩素イオンチャネル(CFTR)の細胞内トラフィキングや品質管理機構について優れた業績を残しておられます。
 今回、日本生化学会大会で来日されるのを機会に本学に来学され、ご講演いただきました。

第7回
日 時 平成15年10月3日(金)午後5時から
場 所 医薬研究棟3階ゼミナール室(1)(2)
演 題 「超音波とマイクロバブルを用いた新規遺伝子導入法」
講 師 谷山義明 先生(大阪大学大学院医学系研究科)
内 容
 谷山先生は超音波診断装置にも使用されているレベルの安全な超音波を使用し、診断用の造影剤としても認可されてきている超音波造影剤(マイクロバブル)との併用によるsonoporation現象を利用して、物理的に細胞内に遺伝子等を導入する新しい遺伝子・ドラッグデリバリー技術の研究を進めてこられました。
 今回の講演では、1)血管再狭窄モデルへの遺伝子治療、2)腎移植モデルへの遺伝子治療、3)片腎モデルへの遺伝子治療、4)胎児への遺伝子導入、5)下肢虚血モデルへの遺伝子治療、6)肝細胞増殖因子(HGF)を用いた血管新生治療などについてご講演いただきました。

第6回
日 時 平成15年5月19日(月)午後6時から
場 所 医薬研究棟5階放射線基礎医学ゼミナール室
演 題 「遺伝子治療デバイスとしての非ウイルスベクターの現状と問題点」
講 師 菊池 寛 先生(第一製薬株式会社創剤代謝研究所)
内 容
 最近遺伝子治療に向けて、ウイルスベクターが安全性上の問題もあり、非ウイルスベクターの利用に注目が集まっています。今回遺伝子デリバリー研究会の第3回シンポジウムでも話されております「遺伝子治療デバイスとしての非ウイルスベクターの現状と問題点」についてご講演いただきました。

第5回
日 時 平成15年3月25日(火)午後5時から
場 所 医薬研究棟5階放射線基礎医学ゼミナール室
演 題 「Do radiation induced iong-lived radicals(LLR) cause genomic instability?」
講 師
Charles A. Waldren 先生(財団法人放射線影響研究所)

第4回
日 時 平成15年3月24日(月)午後4時から
場 所 医薬研究棟3階ゼミナール室(1)(2)
演 題 「甲状腺機能低下症ラット・マウスの原因遺伝子の解析」
講 師 安居院高志 先生(北海道大学大学院獣医学研究科教授)
内 容
 甲状腺機能の低下により小人症を呈するモデルラット(WIC-rdw)及びマウス(DW/J-grt)の原因遺伝子の解析を行った。両モデル動物ともに国内で樹立された動物モデルで、低血中甲状腺ホルモン濃度並びに高血中甲状腺刺激ホルモン濃度を示し、甲状腺の形成不全を伴う小人症を呈するという同様の臨床症状を示した。しかしながら、原因遺伝子座の染色体マッピングの結果、両原因遺伝子座が存在する染色体はシンテニーを示さず、原因遺伝子はそれぞれ異なることが推察された。rdw(rat dwarf)については、その原因がthyroglobulin遺伝子の点突然変異により合成されたthyroglobulinタンパク質が小胞体より細胞外へ輸送されないためであることが明らかにできた。一方、grt(growth retarded)については、1,000匹以上のバッククロスを用い0.1cM以内のポジションまで追い詰めているものの、現在までのところ原因遺伝子の同定にまでは到達していない。
 本講演では、両ラットの病態解析と原因遺伝子同定のための分子遺伝学的方法について概説されました。

第3回
日 時 平成15年3月19日(水)午後5時から
場 所 医薬研究棟5階放射線基礎医学ゼミナール室
演 題 「痛みと老化−神経生理学的アプローチ−」
講 師 岩田幸一 先生(日本大学歯学部教授)
内 容
 老化に伴って、神経系には様々な変化が誘導される。多くの場合、老化は神経系に対し、細胞数の減少、シナプス数の減少あるいは神経伝達能の低下など、様々な退行性変化をもたらすことが知られている。このような退行性変化は、痛覚伝導系においても観察されるであろうか。最近、我々は老齢ラット(30−32ヶ月齢)の脊髄後角に分布する侵害受容ニューロンの多くが、若齢ラットに比較して高い興奮性を示すことを発見した。
 本講演では、老齢ラットにおいて観察される侵害受容ニューロンの過剰興奮を示すデータを紹介し、その神経機構について考察する。

第2回
日 時 平成15年3月13日(木)午後4時から
場 所 医薬研究棟3階ゼミナール室(1)(2)
演 題 「C型レクチン様タンパク質の抗血液凝固、血小板凝縮等の機能と立体構造の関係」
講 師
水野 洋 先生(独立行政法人農業生物資源研究所)

第1回
日 時 平成15年3月10日(月)午後3時から
場 所 医薬研究棟3階ゼミナール室(1)(2)
演 題 「マウス肝炎ウイルス感染事故−147日間の記録−」
講 師 笠井憲雪 先生(東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設長)
内 容
 2000年11月上旬に当施設で起こったMHV感染事故は、東北大学の研究者と動物実験施設に莫大な損害を与えた。このウイルスの由来ははっきりしており、発見も早かったため当初は最小限の被害で済むと考えていた。しかし、感染の伝搬は急速であり、さらに2つ目のMHV感染源の存在により、結局5階6階のマウス飼育室半数以上が陽性と判定された。施設の総力を挙げ事故対策にあたったが、膨大な損害を被り、復帰に5ヶ月かかった。