<年頭の挨拶>

「21世紀への飛翔」

実験実習機器センター長
医学部免疫学講座教授 村口 篤


 明けましておめでとうございます。
 祝ミレニアムの花火が世界各地で打ち上がり、Y2K問題対応で日本列島が右往左往する中、不安な気持ちで1999年に別れを告げましたが、明けてみれば、いつもと変わらない平穏な新年でありました。
 21世紀への移行の年を迎え、新世紀の入口に立って、21世紀の先端的技術や医療の革新とそれが人類に及ぼす影響について述懐してみたいと思います。  未来学者のアルビン・トフラーが、21世紀は情報技術とバイオ技術が融合し「バイオ・インフォメーション時代」が到来すると予見しております。情報技術に関しては、遅くとも2010年までに「デジタルネットワーク」が開花し、パソコン、インターネット、携帯電話などの端末を毎秒10メガビットの高速回線で結ぶIT百花繚乱の時代に突入し、社会の枠組みが変わるパラダイムシフトの到来が予測されます。
 一方、バイオに関しては、すでに遺伝子組み換えやクーロン技術は作物や家畜の品種改良に実用化され、クローン牛、トウモロコシ、ジャガイモ等は店頭販売がなされていますが、さらにこれらの商品分野の拡大が予想されます。人間の遺伝情報も21世紀の初頭にはすべて解読されます(米国のベンチャー企業は数年内に解読が終了するという話もあります)。ヒトの遺伝情報の解読により、医療分野に大きな変革が起こるのは必須です。
 まず、個人の遺伝情報により、罹患しやすい疾患を事前に予測することが可能になり、医療は現在の治療中心から予防中心へと変革するかも知れません。一方で遺伝子診断が一般化し、「DNAチップ」を用いて癌や糖尿病などの早期発見がなされ、薬学の分野では、ゲノムインフォマティクスを駆使し、薬効が高く副作用がない画期的な薬「ゲノム創薬」が開発されることが予想されます。
 治療に関しても、患者個人の遺伝子情報から、その人に合った治療を行う「テーラーメード医療」が実用化されるでしょう。これらにより、がん、心臓病、糖尿病や痴呆症などは克服されるかも知れません。
 先端医療については、「再生医療」の技術応用がさらに進み、あらゆる組織に成長する力を秘めた「万能細胞」を使って自分自身の血液や臓器を作り出すことが可能となり、一方で拒否反応のない臓器移植ができる時代がやってくることが想像されます。
 これらの結果、人間の寿命はおそらく百歳以上に延び、人類の夢であった不老不死の道が開かれる可能性も出てきたわけです。当医薬大の付属病院においても遠くない将来にこのような先端的未来医療が行われていることが推測されます。しかし、このような医療革新が果たして人間に真の幸福をもたらすかどうかは別問題です。
 このような医療を取り巻く環境の中で大学の改革が急務になっています。当実験実習機器センターでは、センターの実験機器の効率的運営と、より高度な研究教育支援体制の確立を目指し、センターの管理運営改革について数年間検討してまいりました。そして、いよいよ、2000年からセンター職員を中心とした新しい管理運営をスタートすることとなりました。センターの教官・職員一丸となり精一杯の努力する覚悟ですので、よろしくご指導ご鞭撻下さい。
 医薬大の将来構想に目を向ければ、現在大学執行部は、21世紀への飛翔に向けて着々と改革準備を進めているようです。共同利用施設に関しては、現在の共同利用施設を統合し、生命科学情報研究教育センターを設立する構想が現実化に向けて進んでいると理解しています。このような前向きな将来構想は、まさに、どんより曇っている北陸の空の雲の間から差し込む一条の太陽光線であり、研究者やその支援者に夢と希望を与えるものです。この光が決して消えないように、大学執行部に大きな期待を寄せるものです。


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