ご あ い さ つ

実験実習機器センター長 服部征雄


 平成8年8月1日付けで、前任の高屋教授の後を引き継ぎ実験実習機器センター長を拝命して1年とちょっとになり、私の任期もあと10カ月程になってしまった。その間、新設医大がメンバーとなっている実験実習機器センター長会議(第14回は沖縄の那覇で開催された)や、最近メンバーになるよう要請されている総合大学系の国立大学機器・分析センター会議(第1回が東京で開催された)にも出席して各大学が抱えているセンターの問題点、将来像がおぼろげながら解りつつある状態にあるにすぎない。他の大学に比較して、本実験実習機器センターは比較的こじんまりとまとまり、良く運営されているのではないかと思っている。しかし、実習機器センターの問題点は日本の大学自体が抱えている問題を浮き彫りにするものであり、一人センター長の采配が問題解決に一歩前進する訳でもない。

 外国の大学での留学経験からみると、相当ハイレベルの技術官がおり、我々の研究の強力なアドバイスをしてくれる。測定の自動化を依頼したら、私の力量にあわせたコンピューターソフトを開発してくれ、猫でも出来るようにしてくれたのには驚いた経験がある。また、スペクトルから推定構造をだし、更に核磁気共鳴でこのあたりの領域を二重照射してくれと依頼したら、それだけに飽き足らず、もっと高度なテクニックで測定してくれ予想通りだと電話をもらったこともある。器械が大型になり操作も複雑になる一方なのに、なかなか技官の技術を職種、賃金との兼ね合いも含めて評価してくれないのが日本の実情である。一方、外国では技術職員の誇りがあり、そんな器械、日本ではしょっちゅう測定していたから私にやらせてくれといってもなかなか、うんと言われず、真夜中にこっそり測定した思い出もある。文部省はそう簡単には機器管理の職員をつけてくれないので、各研究室の助手や助教授の負担も増え続ける現状にある。彼らを煩わさなくても済む測定は、センターの技術職員にまかし、本当に彼らが必要な測定だけは彼等にお願いする様にしないと、学問の進歩にはマイナスである。教授が秘書の仕事をしていて、てんてこ舞いになっている状況に似ている。

 実験実習センターは毎年特殊装置の維持費が入ってくるので、運営予算として五千数百万円の規模である。それらは主として部会が管理しているといっても過言でなく、部会の実情は部会ごとに相当異なる。年々、新規購入の大型機器に割り当てられる維持費は少なくなってきている傾向にあり、もう少し全体的観点から維持費の運用を考えなくてはならないようになってきている。大型機器の日進月歩の向上は目覚ましく、それに付随したコンピューターソフトの進歩はさらに激しい。数年もすると、他の大学で新規購入した機器との差が歴然としてくる。そんななかで、大型機器のリースの話も浮上してきている。機器の定期点検もリース会社がやってくれ、年々の進歩にも対応してくれるのでスタッフ不足に悩む各大学の機器センターも真剣に考え始めている。職員一人停年まで雇うためにかかる人件費の総額を考慮にいれれば、まんざら絵に描いた餅でもないように思われる。

 大学によっては、機器センターからの大型機器購入の概算要求が部局からの申請より優先される傾向になってきている。全学的利用を考慮に入れれば至極あたりまえのことでありながら、本学ではまだまだコンセンサスを得ていない。ただ、この2年間、機器更新費が五百万円程認められてきているので、是非とも継続して行って欲しい。部局間の狭間にあり、カオスの様な状態から早く脱却すべきと思っている。

 機器分析センターに行くのに、建物を出てキャンパスを歩き回らなければならない総合大学の場合と違って本学のセンターは両学部、研究所からも近いし、利用者も適度であり、利用環境としては大変よいのではないかと思っている。今回、センターのスタッフが総力をあげて作成した「実験実習機器センター利用案内」も、カラー刷りで大変見やすくなっており、適宜新しい情報に取り換えられる様になっているので、利用者の意見を反映し、年々充実したものになっていくものと思う。本センターは利用者の便を最優先にすべき性格のものでり、今後とも御意見をお聞かせ願い、種々の改善を行っていきたいと思っておりますので、是非、御協力ください。


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