消化管細胞の増殖・分化誘導機構の解明
 共同研究機関:
 同大学薬学部生物物理化学 http://www.pha.u-toyama.ac.jp/phaphy1/index-j.html

 消化管は食物の消化・吸収の重要な役割を担っています.消化管粘膜には様々な細胞があり,増殖能を有する未分化な幹細胞が移動しながら分化し,機能を保持した細胞へと成熟します.しかしながら,この消化管幹細胞の増殖,機能細胞への分化の詳細なメカニズムは殆ど解明されていません.我々は,tsSV40大型T抗原遺伝子導入トランスジェニック動物から得られた機能を保持した種々の細胞株を用いて,消化管細胞の増殖・分化機構を解明できればと考えています.
 結腸には炭水化物などから嫌気的発酵によって生じる酪酸を含む短鎖脂肪酸が存在し,これらは結腸の恒常性維持に重要な役割を演じています.また,in vitroの実験系で酪酸は細胞の分化やアポトーシスを誘導することが示されています.最近,マイクロアレイ技術と樹立したマウス結腸上皮細胞株MCE301を用いて,酪酸による細胞分化の過程に関与する遺伝子群を網羅的に解析しました.MCE301細胞の酪酸処理は,ヒストンの高アセチル化やアルカリフォスファターゼ活性の上昇を伴う細胞の分化を誘導しました.さらに,GeneChipシステムとIngenuity パスウエイ解析ソフトウエアを用いて,これに関連する遺伝子ネットワークを明らかにしました.尚,細胞の分化の過程で発現が上昇する遺伝子の遺伝子ネットワークを示した図が論文の表紙を飾りました (FEBS Lett. Volume 580, Issue 13, Pages 2993-3342 (29 May 2006))


関連論文:
1. Tabuchi, Y. et al.: Identification of gene s responsive to sodium butyrate in colonic epithelial cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 293, 1287-1294 (2002) [abstract]
2. Tabuchi, Y. et al.: Genetic networks responsive to sodium butyrate in colonic epithelial cells. FEBS Lett 580, 3035-3041 (2006) [abstract]

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